登壇者:白鳥美紀(ヤマトホールディングス株式会社100周年記念事業 シニアマネージャー)
日 時:8月30日(土) 15:00〜16:30
場 所:D201号室
講演内容
ヤマト運輸は2019年に創業100周年を迎える日本で初めてのトラック運輸会社である。創業者であり、宅急便生みの親小倉昌男の父である小倉康臣は、1931年に3か条からなる社訓を制定した。「ヤマトは我なり」その一節であるこの条文は「全員経営」を理念として謳ったもので、ヤマト運輸ではこの頃から社員1人ひとりが経営者の立場に立って仕事をするという経営理念を掲げていた。
そして宅急便の成長には、この全員経営が不可欠だった。社員は単なる運転手ではなくセールスドライバーとして第一線のフォワードでお客様にサービスを提供する。小倉昌男はセールスドライバーに「寿司屋の職人になってほしい」と言っていた。寿司屋の職人はその日のネタを自分で仕入れ、下ごしらえをして美味しく見えるように並べる。お客様が注文した寿司を自分で握って出し、カウンターのお客様とは「今日は大間の鮪がありますよ」「さっぱりとした梅じそ巻はいかがですか」などという会話も忘れない。そして会計をして「またお越し下さい」と最後のお見送りまですべて自分でやるのである。宅急便のセールスドライバーも寿司職人にように「自ら考え自ら判断し行動してほしい」というのが小倉の思いだったのだ。
しかし、肝心なのはどうやって社員のやる気を引き出すかだ。キーワードは「コミュニケーション」。そしてそこに必要なのは「情報」。組織のトップが持っている情報を悪いことも良いこともすべての社員に共有することにより、社員はいちいち上司に指示されなくても自分で動くようになる。そして権限と責任を与えることによって社員一人ひとりが経営者の立場に立って仕事をする「全員経営」が実現するのである。
そのためにヤマト運輸では現場の組織を小さくした小集団管理を行っている。宅急便センターは全国に約6000あり、一つのセンターには10から20名の社員が所属している。センター長は自ら宅急便の集配をするプレーイングマネージャーである。セールスドライバーは外に出れば1人で何でもこなす。お客様の前でいちいち上司の判断を待っていたのでは仕事にならないので、自ら考え判断し行動することが当たり前。そして社員が日々お客様と接する中で得た情報から新しい商品やサービスがどんどん生まれたのである。
登壇者情報
大学卒業後、現在のヤマト運輸に入社。1997年に女性で初めて経営役職者として広報課長に就任。2005年には関東支社副支社長に就任。ヤマト運輸では女性躍進推進活動を進め、女性の管理職比率を上げるために女性のためのリーダーシップ研修を実施するなど、現場の女性社員と真正面に向き合い、話し合い、行動するリーダーシップの持ち主として知られている。社外活動も活発に行うと伴にプライベートでは結婚・出産など私生活も充実させている。